Measurement Microphones

計測用マイクロホンとは

マイクロホンは、携帯電話、PC、ポータブルスピーカーからテレビ、タブレット、スマートウォッチまで、ほとんどすべての電子機器に搭載されています。この記事では、音を定量化するシステムで使用するために特別に設計されたマイクロホン、つまり計測用マイクロホンの物理特性について説明します。

計測用マイクロホン
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計測用マイクロホン

ブリュエル・ケアーは 1945 年以来、高品質な計測用マイクロホンを開発、製造してきました。我々は、マイクロホンの精度と性能を継続的に向上させるために、研究開発と校正方法について絶え間なく取り組んできました。

これにより、現在では音響地震検知システムからエアバッグ計測、超音波計測まで、あらゆる種類のアプリケーションをカバーする幅広い製品ラインナップの計測用マイクロホンを提供するに至りました。

マイクロホンの原理

計測用マイクロホンは、非常に単純な物理的原理に基づいています。それはキャパシタンス、つまり静電容量の性質です。

マイクロホンの容量は、バックプレート(硬い金属プレート)とダイアフラム(薄くて張力の高い金属膜)の間の距離に反比例します。音圧にさらされるとダイアフラムが変形し、バックプレートに近づいたり遠ざかったりして、静電容量が変化します。この変動が、電圧に変換されます。ほとんどの計測用マイクロホンは、この原理に基づいています。

マイクロホンのダイアフラム

計測用マイクロホンの直径は、1、1/2、1/4、1/8インチです。ダイアフラムが大きければ大きいほど剛性が低くなり、より小さな音圧を検出するのに適しています。一方その大きさにより、上限周波数の限界があります。波長がダイアフラムと同程度か、より小さい高い周波数の検出は困難です。

ご存知ですか?

ダイアフラムが大きいと自己ノイズが低くなり、小さいと高周波の測定が可能になります。小型のマイクロホンは、高周波における全指向特性を向上させます。

マイクロホンと音波
一般的な1/2インチマイクロホンのダイアフラムの変位は、1 Pa の音圧では 5 nm 程度。ダイアフラムを地球サイズの直径にしたとしても、わずか 5 m の変動にとどまる

20 kHz の音波の波長20 kHz の音波(可聴域の上限)の波長は 1.7 cm。人差し指の幅とほぼ同じ


ご存知ですか?

音圧音場で自由音場型マイクロホンを使用すると、20 kHz 付近で 9 dB 近くの誤差が発生します。

マイクロホンの周波数応答チャート

マイクロホンの周波数応答チャート。

マイクロホンの感度

感度とは、ある音圧下においてマイクロホンが発生する電圧のことです。単位は V/Pa で、周波数に依存します。1 Pa の音圧は 94 dB SPL に相当します。そのため、ほとんどのマイクロホンの校正器(たとえばブリュエル・ケアーの4231 型音響校正器)は 94 dB SPL つまり 1 Pa を出力します。

感度は周波数に依存するため、周波数特性は全周波数範囲における感度を表すものとして定義されます。通常、250 Hz の感度を基準としたデシベルで表されます。

ご存知ですか?

我々は研究室標準マイクロホン 4160 型 4180 型の感度変化を、1984 年から注意深く観察してきました。その変化は、± 0.02 dB にとどまります(0.2 %未満の変化)。これら 2 つのマイクロホンは、世界中の校正システムで使用されています。

マイクロホン感度チャート。

1984 年から 2018 年までの 4160 型および 4180 型研究室標準マイクロホンの感度変化を示すマイクロホン感度チャート。

マイクロホンのダイナミックレンジ

計測用マイクロホンのダイナミックレンジ (16 dBA - 143 dB など)は、マイクロホンが完全な線形トランスデューサとして機能する範囲です。

最初の数値は自己ノイズです。コンデンサマイクロホンもプリアンプも、電子回路の限界やブラウン運動などに起因する固有のノイズを持っています。

この数値は、マイクロホン自体のノイズと同じ電圧を発生させる音圧レベルを示しています。自己ノイズは、特に指定がない場合、人間の可聴域(22.4 Hz ~ 22.4 kHz)の 1/3 オクターブバンド、A 特性で測定されます。2 番目の数字は、全高調波ひずみが 3 %未満で測定可能な最大音圧レベルです。

ご存知ですか?

マイクロホンのダイナミックレンジは、多くの場合マイクロホンプリアンプにより制限されます。

たとえば、CCLD(定電流ラインドライブ)プリアンプは、20 kHz 未満で最大 7 Vpeak を供給するように設計されています。これは、50 mV/Pa の感度のマイクロホンでは最大 134 dB SPL となります。従来のプリアンプを使用することにより、ダイナミックレンジの上限を 146 dB まで拡張できます。



計測用マイクロホン

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マイクロホン 
プリアンプ

マイクロホン感度仕様



マイクロホンのダイナミックレンジ
ご存知ですか?

ブリュエル・ケアーの 4191 型 1/2 インチ自由音場型マイクロホンは、20 dBA ~ 162 dB、つまり 142 dB のダイナミックレンジを備えています。

この比率を長さに換算すると、髪の毛の直径からエッフェル塔を 3 つ積み重ねた長さ以上の差になります。

マイクロホンの音場

計測用マイクロホンは、そのサイズと形状によって音圧に影響を及ぼします。音場の種類によって影響が異なるので、マイクロホンの設計で考慮され、最適な応答となるように影響を補正します。これにより、選択した音場に対して常にフラットな応答となるのです。

計測用マイクロホンは音場により大きく 3 種類に分類され、その音場に最適化されています。そのため、音場に適したマイクロホンを選択することが重要です。

自由音場

自由音場型マイクロホンは通常、ラウドスピーカーや屋外の音を測定するために使用されます

 

 

自由音場型マイクロホン

反射物のない自由音場で測定するためには、屋外に設置したポール(または同等品)の上や無響室での測定が必要です。

無響室は、天井、床、およびすべての壁が、反射を除去する高吸収性の材料で覆われています。したがって、反射波の干渉なしに、騒音源からの任意の方向の音圧レベルを測定できます。 

 

拡散音場

無響室の対極となるのは、すべての面が可能な限り硬く、反射するように作られ、平行面が存在しない残響室です。これにより、すべての音波がすべての方向から等しい確率とレベルで同時に到達する拡散音場が発生します。
Transducer icon詳細
4191 型マイクロホン

拡散音場に近い音場は、硬い壁のある建物での室内測定、教会など、多くの音源が同時に存在する環境で実現できます。

自分のいる音場がよくわからない場合、測定誤差を少なくするため、拡散していると仮定するのがよいでしょう。 
拡散音場型マイクロホンは通常、車内の騒音や建物の音響を測定するために使用されます。


拡散音場型マイクロホン


音圧音場

音圧音場は、音場内のどの位置でも同じ大きさ、位相の音圧となります。音圧音場に非常に近いのは、人工耳などの小さな空洞(波長に比べて小さい)です。

音圧音場型マイクロホンは通常、カプラ、風洞、または表面音圧測定で使用されます

音圧音場型マイクロホン


マイクロホンの安定性

ブリュエル・ケアーの計測用マイクロホンは、時間経過、温度、湿度、周辺気圧に対して極めて安定して動作するように設計されています。

最大限の安定性を実現するために、厳選された高品質の素材を使用し、制御された熱処理を施して人為的に経年変化させ、カートリッジ内の張力を解放し、製造工程のすべての段階でマイクロホンを継続的にテストしています。

マイクロホンは、クラス 10 のクリーンルームで製造される際に、複数の洗浄工程にさらされます。クラス 10 のクリーンルームでは、0.5 μm 以上の粒子は 1 立方フィートあたり 10 個以下、1~5 μm の粒子は 2 個以下です。ちなみに、一般的な部屋の空気はおよそ「クラス 100 万」となります。

バックプレートとダイアフラムの距離が 20 μm 程度であることを考えると、大きな粒子がキャビティ内に存在すると、特に結露や温度変化が生じたときに安定性に問題が生じます。 

膜に穴が開いていると汚染が発生し、粒子や残留物がカートリッジに混入します。修理の際に同じレベルの清浄度を達成しても、最適なレスポンスを持つマイクロホンが保証されるとは限りません。そのため、ブリュエル・ケアーはマイクロホンの修理を受け付けていません。