Sound Intensity and Sound Power Relationship

音響パワーと音圧

音響パワーとは、単位時間あたりに音源が放射した空気中の音響エネルギーの総量です。一方音圧は、音源が放射した音のエネルギーが、その場の音響環境の影響を受けて測定された物理量です。音響パワーは原因、音圧は環境の影響を受けた結果といえます。

音響パワーと音圧の関係

音響パワーと音圧の関係を、熱に例えて説明しましょう。 

電気ヒーターは一定の熱出力があり、それが部屋に放射されて部屋の温度を上げています。ヒーターの出力は、そのヒーターが設置されてある部屋には依存しません。しかし部屋の温度は、ヒーターからの距離や部屋の広さ、壁や床の熱の吸収や伝わり具合などの部屋の環境によって変わってきます。

音源の音響パワーと空間の音圧レベルの関係はこれと似ています。音源から放射される音のエネルギーは、その空間の音圧レベルを上昇させます。音源の音響パワーレベルは部屋に依存しませんが、音圧レベルは音源からの距離や部屋の特性に依存します。部屋の大きさ、室内の壁、床、天井などがどれだけ音を反射または吸収するかなどが関係します。Sound Pressure and Sound Power Relationship

音圧と同じように、音響パワーもデシベルで表わされます。たまに基準が省略された表記で混乱を招くこともあるようですが、基準はそれぞれ、音圧レベルは20μPa、音響パワーレベルは1pWです。 

この基準は、完全な自由音場、伝搬面積が1m2の距離において、音圧レベルと音響パワーレベルが等しくなるように選定されています。

 

なぜ音響パワー計測が必要か?

製品の音響パワーレベルは非常に有用です。これにより、試験環境や音源からの測定距離などの情報がなくても、製品間の音響出力を客観的に比較することができます。このため、音響パワーレベルは、製品のラベリング、騒音規制値の設定、またその規制値に対する適合確認に最適です。

音響パワーレベルは測定環境や場所に依存しないため、既知の音響環境における、ある製品から特定の場所への音圧レベルの影響を計算することもできます。 

例えば音響コンサルタントは、ある装置を特定の場所に設置した場合に、近隣住宅で発生するであろう音圧レベルを音響パワーレベルから計算する、といったことをします。その計算をもとに、住宅での騒音が関連規制に適合しているかどうか、騒音軽減手段を検討すべきか、あるいは別の、もっと静かな装置を選択すべきかを判断します。

 

音響パワーはどのように測定するか?

音響パワーは、音圧または音響インテンシティから算出されます。

音圧から音響パワーを求めるには、直接法と比較法の2つの方法があります。直接法は自由音場で測定するのが一般的ですが、残響音場でも可能です。一方比較法は、残響音場でのみの測定となります。

直接法では、測定対象物を囲う仮想表面を定義し、その表面上の複数の位置で音圧測定を行います。これらの音圧レベル測定値は空間的に平均され、そこから音響環境(暗騒音など)の影響を補正します。

測定面の平均音圧レベルが求まれば、 基準表面積(S0 = 1m2)と測定面の表面積(S)を下式に代入するだけで、音響パワーレベルを算出することができます。このようにして、音圧レベルは音響パワーレベルと等しくなるのです。

Sound pressure equation

比較法は少し異なります。比較法では、既知の安定した音響パワーレベルを持つ基準音源を使用します。試験室では、基準音源が動作している状態と測定対象が動作している状態の両方で音圧測定を行います。そして、それぞれの音源で測定した音圧レベルを比較することで、測定対象の音響パワーレベルを算出します。

Sound power equation-comparrison

音響インテンシティ測定から音響パワーを算出する方法は、音圧法における直接法と非常によく似た手順です。しかし、音響インテンシティは時間平均されたベクトル量であるため、音圧法の測定よりも暗騒音や残響の影響を受けにくくなっています。このため、音響インテンシティベースの音響パワー測定は、特に現場での測定に適しています。

 

音響パワー測定の規格

音響パワー測定には規格が数多くあり、あらゆる種類の音源、測定環境に対応し、そして精度の等級を決定します。ここでは規格の詳細な議論はいたしませんが、下記に概要を述べます。

音響パワーの規格は、まず「基本規格」と「製品規格」に分けることができます。基本規格は、あらゆる種類の製品について、さまざまな測定環境や必要とされる精度等級での音響パワーの測定方法を規定しています。そのため、測定対象の作動条件や取り付け条件については一般的なアドバイスを行うにとどまります。 

一方製品規格は特定の種類の音源に特化したもので、取り付けや作動条件に関する詳細な要件を規定するとともに、どの基本規格を参照すべきかを指定します。一般的には、測定対象に対応した製品規格が存在する場合は、それを使用します。

製品規格が存在しない場合は、基本規格を使用します。ISO 3740:2019(en) Determination of sound power levels of noise sources -- Guidelines for the use of basic standardsは、音響パワー計測のための基本規格の概要を示しています。測定環境や計測器、測定対象の特性、必要な精度等級などを考慮して、適切な規格を選択するために参照します。

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音響パワーを計測するための機材

音響パワー計測に必要な機材は、選択する手法と計測環境、そして試験対象物の大きさや音源の特性によって選定します。 

ブリュエル・ケアーは音響パワー測定のための計測器、ソフトウェアを幅広くそろえています。下記ご参照ください。